吉田璋也のデザインの中でも、最も数多く作られたものの一つだろう。

(反平鉢:中井窯)
登り窯の空間を有効に利用するため、器の底の釉薬を蝋(ろう)で抜き、
重ね焼いたので、自ずと「蛇の目」の意匠となる。
縁をやや反らした中浅の鉢は、黒釉・白釉何れも形が美しくきわまり、
野菜の煮物などを盛る向付けなど色々と重宝がられる。
牛ノ戸の土は固く焼き締まるので、やや薄作りでも丈夫だ。
しかも重ねるから大量に焼けて価格も安い。食器棚にもコンパクトに収まる。
「用の美」の真骨頂だ。
定かではないが、この大きさになったのは戦後で、
もとはもっと大きな鉢だったようだ。
今回の展示では、それに類する大きめな鉢も出品している。
実は、牛ノ戸焼の、この反平の大きめな鉢が、経緯は定かではないが、
昭和11年(1936)、
イギリスのダーティントンに芸術工芸村をひらいた、レオナード・エルムハーストによって、
ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館(V&A)に寄贈されていたことが最近分かった。
(蛇の目があるかどうかは確かではないが形はほぼ同じ)
また、
昭和27年(1952)に、「牛ノ戸焼ろう抜き黒釉小鉢」を、
MoMA(ニューヨーク近代美術館)が買い上げている。
おそらく、これも反平鉢のようだ。(一度MoMAで実物を確認してみたいものだ。)
戦後、中井窯では専用の出荷用の木箱を作り、
一時は登り窯の三割を占めるほど大量に焼き関東方面に出荷したという。
一見目立たないようだが、吉田璋也のデザインの頂点の一つとなった器である。
(KIT)
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